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ごめんね

こんばんは、上澤そらです。
まったくもって甘くない、小噺。
一時期こんなテイストのものばかり読んでいた時期ががが。



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「ごめんね」
 言葉と共に、眉を八の字に下げる。
 何度その表情を見てきただろう。そして何度、許してきただろう。
 でもきっと、この表情を見るのも今日で最後。
 最後まで、同じ声のトーン。同じ表情。
 急な仕事でデートがキャンセルになった時と同じ。
 あの時と、同じ重さなのかもね。

 別れの予感がしてたからか、言葉はすんなりと受け入れられる。
「他に、好きな人でもできた?」
 呟く声に力はない。
「そんなことないよ」
 直ぐに言葉は出てくるけれど、嘘だ。
 此処を出れば、外に新たな恋人が待っている。
 指輪を外し、テーブルに置く。
 随分と長く着けていたけれど、最初に指輪をはめた時と同じく、石は光輝いている。
 高い買い物だったんだろうけど、こんな終わりを迎えるなんて思っていなかった。
 良い指輪だったのに、置いていくなんて……少し、勿体ない気もするけれど。

 永遠なんてどこにもない。
 より良い条件が出てきたら、其方に行くのは仕方のないことよ、ね。
 沢山の良い思いができた。
 新たな門出に指輪なんて不必要だもの、ね。
 置いて行くことは、仕方ない。

 鏡越しに映る時計は、15時を指そうとしている。
「今まで、ありがとう」
 精一杯の微笑みの表情を浮かべ、席を立ちあがり。そして外に出ようと後ろを向いた瞬間。

 背中に、衝撃。
 次いで酷く熱を持ち、痺れを感じる。
「な……に……?」
 あたしの背中に寄り添った彼が悲鳴のような声を上げた。
「俺のこと、最初から騙すつもりだったんだなっっ」

 ……仕方ないじゃない、貴方がお金をちらつかせたんだから。
 そう言いたかったけれど、自分の口からは鉄分の味がして、言葉が上手く出てこない。
 振り向くと、表情のない彼。
 いつもだったら、切ない笑顔を浮かべて「気にしないで」って答えてるのに。
 今日は、違うのね。
 彼が手に握るナイフは、赤黒く汚れている。

「…た……すけ……て」
 縋るように、倒れ込むように、あたしは彼に身体を預けた。
 彼の肩越しに見える、鏡。
 鏡に映るあたしの顔は、いつもと変わらぬ謝罪の表情で。

 なんだ。
 嘘でも、本気でも、いつだってあたしはこの表情なんじゃない。
 初めて知ったわ、となんだか急に可笑しくなって。思わずあたしの口からは笑いが零れた。
「あ、あは……ふふ」

 そんなあたしに、ナイフは容赦なく振り下ろされるのだった。


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プロフィール

HN:
上澤そら
性別:
女性
職業:
妄想を文字で現す仕事
自己紹介:
合同会社フロンティアファクトリー様の運営コンテンツ
「あなたと!らぶてぃめっとステージ」
にGM登録中の上澤そらと申します。

雑記メインに、ゲームに関する
スケジュール等お気楽に
書かせていただきます。
ゲームの内容に関しては
お答えできませんのでご了承ください。

つまり
たいしたことは
かかない



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